<定期建物賃貸借等の条文解説>
Ⅰ【 定期建物賃貸借等の条文解説 】
借地借家法第38条の「定期建物賃貸借等」の規定には「事業用」と「居住用」二つの使用目的を定めてあります。
【事業用】
同法第1項~4項の規定は、『居住用以外の店舗やオフィスの事業用』を目的としての定期建物の賃貸借契約を定めています。
この事業用建物賃貸借契約の利点は、例えば1ヵ月以上25年の期間でも借りられて、またこの期間の賃料の増減がなく安定して借りることが出来る。結果、引受保険の料率計算が可能となり、英国のロイズ保険会社等が日本のオフィスを借りることが出来ることとなった。
賃貸人にとってのメリットは、長期間安定した収益の確保が出来て、オフィスビル建築の収入の基礎を構成することができて、双方のメリットで事業が成り立つこととなる。
従って、中途解約が許されない。
即ち、①長期間の契約が出来ることとなった。
②賃料の確定特約が可能となった。
③中途解約が排除となった。
④立退料の負担が生じない。
【居住用】
同法第5項の規定は、『居住用』を目的とする「定期建物賃貸借」の定めであります。
この居住用定期建物賃貸借の創設となった背景の一つには、普通賃貸借契約の課題があります。賃貸人は一旦貸したら返してもらえないこと、返してもらうためには賃貸人の正当事由が求められ、正当事由がない場合はいわゆる立退料の提供が求められる等で良質な住宅(例えば自己居住用の住宅を転勤期間のみ賃貸したいが?)の供給が賃貸市場に提供されない等の弊害が指摘されて来ました。その結果、空家住宅が増加することとなった側面があります。
戦後79年を迎えて今日の賃貸住宅の多様性に対応する選択の一つとして「居住用定期建物賃貸借」が創設されました。
よって、例えば自分の家を建て替えする6ヵ月間のみとする賃貸契約も可能となりました。しかし、現実には未だ広く活用されてはおりません。
その大きな理由として、前記した様に「事業用」と「居住用」との違いが浸透していないことで誤解されている可能性がある様です。
つまり、居住用の定期建物賃借権であっても事業用の目的と混同し、賃借人に一方的なリスク(①中途解約ができないのではないか!! ②期間が来たら再契約が許されないのではないか!!等)と解釈されている様にも思えてなりません。中途解約は解約の申し込みの日から1月を経過することで終了します。
再契約も可能です。
そこで、
Q.定期建物賃借権による賃貸借契約は賃借人に不利ではありませんか?不安なので教えてください。
A.確かに法律の条文から見るとその様に読み取れますね。
しかし、本当にそうでしょうか。①「一戸建住宅」の場合は、転勤の期間だけ貸したいという物件の場合は期間到来によって賃貸借契約が終了することとなりますので、そういう意味では永く住めないこととなりますが、一方その期間(例えば2年間)のみ賃借したいとする人も居りますので、選択の一つの商品であると捉えられますね。
②一方、一棟所有の賃貸マンションやアパートの場合は、10室~40室をお貸しする目的で建築して居ります。しかし、誰にでも良いとするものではなく賃貸特有のルールを守れてトラブルの無い「良質な賃借人」に入居してもらいたいと考えて賃貸事業を業としています。中には賃料の不払いを始め、騒音などで他の入居者へ迷惑をかけるなどの人が一部でも居た場合、正常な賃貸事業が成り立たなくなる可能性へと発展することになってしまいかねませんね。
従って、定期建物賃貸借契約(住居用)は、正に賃借人間に於いて、安心出来る人々で構成出来る建物に入居するメリットが契約の仕組みで担保されるものと信じての取り組みであります。
全世界の「98%」が「居住用定期建物賃貸借契約」であります。日本のみが戦後79年経ちますが「普通賃貸借契約」が賃借人にとって安心だと誤解して理解されている様な印象を持っています。
空家住宅(846万戸)の解消をして社会生活の『住』の基盤としての利用・活用の促進のためにも「居住用定期建物賃貸借契約」の普及が待たれるものと思料しています。
<ご参考>
<添付資料>
1.賃貸住宅にも省エネ化が求められる時代(省略)
2.補助金を使って差別化!「住宅省エネ2024キャンペーン」を賃貸経営に活かす(省略)
3.経済産業省「賃貸集合給湯省エネ2024事業」概要(省略)
以上