<原状回復の問題点、他>
Ⅰ【 原状回復の問題点 】
1.毎年恒例となっている賃貸借契約に関するトラブルのベストワンは「原状回復」での退去時の費用負担についてである。
賃貸人と賃借人とでどこまでの費用を分担するかについては、国土交通省のガイドラインで指標が示されています。
それによると、年数の経過によって当然に生ずる変化(経年変化=日照等による変色や劣化等)、および自然に生じる損耗(=戸車、ドアノブ、床、スイッチパネル、カーペット、家具の重さによるへこみ、電気ヤケ、カレンダー跡等)等です。
これらは、人が住んでいることで自然かつ当然に生じる変化や損耗です。
これらを敷金から差し引くのは不適当となります。
2.上記以外(例えばタバコのヤニ、落書き、引っ掻き傷、五寸釘の穴等)の様な場合、賃借人に於いて故意又は過失によって生じた「汚損や破損」の損害は、当然賃借人の負担となります。
多くの賃貸借契約に「特約条項」を定めています。
特約に「退去時に必要な費用は賃借人が負担する。」と契約書に記載されているケースが一般的です。
3.この様な特約条項の効力に関し、最高裁判決 平成17年12月16日(判例時報1921号61頁)は、「通常損耗について賃借人が原状回復義務を負うためには、賃借人が補修費を負担することとなる通常損耗の範囲につき、賃貸借契約書自体に具体的に明記されているか、賃貸人が口頭により説明し、賃借人がその旨を明確に認識して、それを合意の内容としたものと認められるなど、その旨の特約が明確に合意されていることが必要」と判示した。
(なお、本事例は平成13年4月1日 消費者契約法施行日以前の賃貸借契約であったので、同法との関連に触れていない。)
<追記>
2020年4月の民法改正により、「賃貸人は賃貸借が終了した時、または法に則って賃借権を譲り渡した際には、敷金を返還しなければならない」との文言が定められました。
ただし、「敷金は未払い分の家賃や原状回復費用を差引いた後返還する」と法律として明文化しました。
※「礼金」は返還されません。
※「敷引き」は、通常損耗の回復費用敷金または保証金から差引く慣習ですの
で、消費者契約法第10条による「消費者の義務を加重」という点に引っか
かる可能性があります。
Ⅱ【 商人は水であれ 】
1.伊藤忠商事(株) 代表取締役会長CEOの岡藤正弘氏は、「商人は水であれ」を自身の哲学としています。
「お客様に合わせて丸にでも四角にでもなれる。それがプロというものだ」
と述べ、そのためには「一つの職場で『一所懸命』に打ち込んで一芸に秀でること、一つを極めればいくらでも応用が利く」と語っています。
歴史を学ぶには、一人の歴史上の人物を追うことで、その時代に生きた人への理解が深まったりします。
時には他人や時勢のせいにしたりしてしまうことで自責の念にかられてしまい、その人の心にしこりが残ってしまうこともありましょう。
場合によっては、空を流れる雲や川の流れる水のごとく過去等の失敗にこだわったり、執着せずに自然にありのままに身を任せることを「行雲流水」といいます。
2.従って、自身の判断で都合の良い部分だけを喜びとすることではなく、何が起きてもくよくよせず人生の一欠片として事実を受け入れることで、澄み切った心になるのかも知れません。
永い永い人生には常に起こり得るものなので、考え方一つで物事を受け止める寛容な心で自分を客観的に捉えて見ることも大切ではないかと思料します。
「老いてなお 吊革掴む 安吾の忌」( 雪 雄 )
Ⅲ【 外国資本が日本の土地取得の課題と問題点 】
1.日本の土地が外国人又は外国資本家企業が取得していることのニュース(SNSに投稿)等が話題となっている。
2.特に今年(2023年1月末に)、中国人女性が沖縄本島北方の無人島の一つである「屋那覇島」を3年ほど前にビジネス目的で購入したとのこと。同年2月中旬には中国民営コングロマリットが北海道に「キロロリゾート」他を持つ日本の事業会社(ネイピア特定目的会社)の株式100%を110億円で買収する意向との動きがある。
これまで土地取得は事実上野放し状態であり、対策を講じる声も以前から叫ばれて来ていました。
一方、現状に於いて日本人は中国の土地を購入することができないため、公平性を欠いている。
ようやく2021年6月23日に、自衛隊基地や国境離島等における土地及び建物の所有及び利用の適切で実効的な枠組みに関し、新規立法が交付された。
3.<法律の要点>
(1)「注視区域の指定」及び「特別注視区域の指定」(施設の敷地の周囲概ね1kmの範囲内で指定)
区域内にある土地等に係る契約の届出(特別注視区域内のみ事前届出)が必要となった。対象土地及び建物の所有者、賃借人等届出事項、所有者等の氏名、住所、国籍等。
ただし、「特別注視区域内」にある土地等の面積200㎡(建物の床面積200㎡)を下回る場合、原則として届出はいらないが、政令でその規模を定めることが出来ることとされている。
4.<利用規制>
・他法令に基づく措置
・機能を阻害する利用の中止の勧告⇒命令
・国による買取り、損失の補償
等が法律によって定められた。
日本の民法に基づく「所有権」は消滅することも失われることもない。従って、前記の様な「防衛・安全保障上」の本法制度創設の他に、中国人による北海道の某村一帯の水源地を買われることにより、「まちづくり等都市計画」等で地権者が中国へ帰った場合等の場合は、権利関係等の調整に時間と通常かかる費用以上の負担を要することとなり、大きな国家損失となる可能性も検討すべき時代となった。
「引用文献」
・宅地建物取引士講習テキスト (公益財団法人不動産流通推進センター 発行)
・職場の教養 2023年2月号 (一般社団法人倫理研究所 発行)