判例時報
1.<結語>20年も前に自殺した物件(土地)を仲介した宅建業者(Y)に買主が説明義務違反と訴え、松山地方裁判所の裁判官はこれを認め金170万円の支払いを命じた。(平成25年11月7日判決言渡し(判例時報2236‐105頁))
※事件の内容
1)買主は平成20年12月1日に戸建マイホーム用地として宅建業者(Y)の仲介で土地を金2700万円で購入し、自己の名義の登記手続きも完了した。
2)この土地はもともと建物(B所有)が建っていたが、昭和61年にBの内縁の妻が実の息子に殺害されその遺体をバラバラにして近くの山中に埋められるという事件があった。昭和63年にBの実子(娘)が建物内で自殺した。その後本件建物は取り壊され転々(7者)と所有者が変わり、賃貸駐車場として利用されていた。
3)宅建業者(Y)はこれら一連の事件、事故後について知らなかったが、本件売買代金決済の数日前にこれら一連のことを知ることとなったが、買主に20年も前のことであることに加えて所有者が転々としていたこともあって事件、事故について告げなかった。
4)同裁判所は宅建業者(Y)の契約時においての説明義務・調査義務違反は認めなかったものの最終取引である決済前に知った事実を告げなかったことは説明義務違反にあたるとして損害賠償を認め170万円の支払を認定した。
5)この様な自殺の事実は、一般的には忌避感ないし抵抗感を抱かせることで「心理的瑕疵物件」と呼ばれている、一方売主は本物件について前述の経緯を知っていたとしても自らの売買価格の減価の要素となるようなことは言わないのが一般的でもある。
従って宅建業者(Y)は売買の仲介にあたり売買契約後と言えども、売買契約の当事者へ決済の判断に重要な影響を及ぼす事実について説明する義務を負っている。
確かにこの様なケースは極めて稀であります。加えて、このことによって売買の効力有無や契約を解除となった場合に新たな紛争になる可能性も含まれている。しかし、取引の重要の要素が
その判断が優先されるべきものと思料される。又、もう一つの選択肢としては、決済日を延期するなどの努力が求められたとも考えられます。(私見)
2.<不動産の「賃貸」や「売買」は※ICTサービス利用者でしばしば決まる>
1)不動産を買いたい又は借りたいとする物件の問い合わせは、パソコンやスマートフォンから当社の情報サイトにアクセスし、メールでの交信で進めています。
2)時代の推移なのでしょうが、以前は主に賃貸はリクルート等の雑誌、売買関連は新聞で情報を取得しての問い合わせでした。
3)今日は、前述の1)が100%と言っても過言ではありません。これらの背景はグローバル化時代の中で特に日本のブロードバンドサービスの整備は世界でも№1と言われております。そのうち、直接な経済的効果、あらゆるブロードバンドサービスの普及による家計支出は新規サービス市場で8兆円、端末市場で0.65兆円、計8.7兆円。既存サービス市場は15.9兆円合計24.6兆円と言われております。資料出所(総務省、家計消費者状況調査H22年)
4)この様に通信情報発達交信のため対象たる物件はネットで取得し自ら現地に足を運んでいて、ある一定の情報を得てから不動産会社への問い合わせだったり、訪問して詳細を再度確認して契約となって来ています。したがって、従前のように全てが初期での面談ではないという現象となっています。
Infomation and Communication Technology(インフォメーション アンド コミュニケ―ション テクノロジー)の略語。意味はコンピューターやインターネットに関連する情報通信技術の「総称」のこと