相続税の大増税
1.<相続税の大増税>
来年1月1日から相続税の大増税が到来する。この相続税の改正の目的は「格差是正の観点から、相続税の課税ベース、税率構造の見直しをする。」として、2010年秋から着手して来た。
改正の内容はこれまで多くの報道や各種セミナー等で周知のとおりであるので今回はこれを省略し、その背景や今後の影響について再度考えてみたい。
結論・・・国の方針は税収の確保にある。
2.「背景」<相続税納付者と増税>
′09年時で相続税を納めていた人は被相続人(亡くなった人)100人のうち4人程度で、納税額も1992年当時(約3.8兆円)の半分以下の(1.2兆円)と大幅に下がったことが考えられます。下がった要因はバブル崩壊によって、19年間連続で地価が下がり続けていました。一方、財政法上やってはならないのに特例法を制定し赤字国債を発行している。さらに、政府(主として官僚)らは日本人口の「高齢化」・「少子化」の到来が目前に迫りつつあったことでさらなる危機感を持ち税収確保の名の下で国民全体から見た場合、理解が比較的得られやすい項目として、①「酒・たばこ税」、②「所得税」、③「相続税」を見直してきている。
3.<大増税の要因の弊害>
個人資産家への増税による反動。例えば、タモリさんの呼び名で親しまれている森田一義さん、ソフトバンクの孫正義さん、ユニクロの柳井正さん、ユニバーサルエンターテイメントの岡田和生さんら個人芸能人や企業の創業者らは家族共々相続税の少ない国へ住所を移転することで相続税が減ることも考えられる。居住地移転で、毎年の所得税負担の減少へとなる可能性もあり、リスク(万一失敗すれば破産等で家族共々路頭に迷う)をとって資産を形成した創業者が国外へと住み替える人も出るものと考えられる。即ち、知恵やリスクを取って成長した人への税負担が大きくなり、リスクを取らない人が多くなってしまう。さらには「公正公平」な課税が担保されない仕組みが包含されることとなり、引いては国家の力の衰退を招く恐れはないだろうか?
つまり、「機会の平等」が公平に与えられる社会制度が資本主義社会の根本であるから、基準は、『結果』ではなく『より多くの努力をした者が最も富を得られる』社会でなければ国家の成長も税収の確保も無いのではないだろうか?
重ねて結果のみを基準とすべきではなくその人が多くの困難なリスクを負いながらもより良い社会のために職業等を通じて多くの奉仕、あるいは貢献した人が結果に於いて報われる国や社会でなければならないと思うからである。
特記されなければならないのは前記の方々は「全員創業者ら」である点だ。
4.<団塊の世代の動きに注視>
団塊の世代は戦後のベビーブーム世代(1947年(S22)~1949年(S24))の3年間に生まれた人で664万4000人、個人金融資産110兆円~130兆円とも言われている。この世代の最後が来年3月31日で満65才を迎える。この世代は、働けるうちはいつまでも働きたいと思っている人の割合は38.7%言われている。
1)<マイナスの影響>
前職場で後輩者への指導者として又はタクシーの運転手(日中のみ労働)及びアルバイト等の低賃金で働く人も出て来ている。
経営者側も熟練者なのでかつ低賃金なら固定経費の削減にも繋がり、歓迎している。私は、このことが、現役世代との軋轢が生じて弊害にならなければ良いと思っている。
2)<プラスの影響>
イ.金融市場(60代で定年退職)の活性化が生じている様だ。「株式」、「投資信託」へ6兆円が回っている。(野村総研2010年調査)
ロ.退職金の他、親からの相続した土地、建物等を売却して、得た手許資金でマンションを取得し、賃貸事業に加わって来ている。賃貸事業で得た賃料収入額は、年金に影響を及ぼさないため積極的に収益物件を探してきている。これらの要因も含めて仙台市内では、中古マンション価格の上昇が続く、特に「仙台駅東口側」と「あすと長町」周辺の人気が高い。
今後ともこの世代の動向は日本経済に影響を及ぼし続けて行くこととなる。
最後に増税対策は相続財産を残さない、あるいはあまり働かず、しっかり休日を取る等又は「信託的生命保険(一括払い)」に入る「不動産信託(2種)」等が良いだろう。