こんなトラブルありました。
前回の7月号レポートで最近の司法に於ける身近なトラブルによる判決
(①上階の子供の騒音で慰謝料60万円。②ベランダでの喫煙5万円。
③自転車事故で被害者へ9520万円)各支払えとする事件を列挙しました。
今回は、最高裁判所の判断が平成3年に判示したことと真逆の判断を平成11年に示した事件を取り上げます。
事例は、銀行がビル建築のために融資した貸金を担保するため土地、建物に「抵当権」を設定していた。
その後ビル所有者は貸金債務の返済を滞納することとなった。
これに対し銀行は競売申し立てて自己の債権回収をとる手続きをとった。しかし、このビルを第三者が不法に占有していたことで、買主が現れなかった。
そこで銀行は、抵当権に基づき不法占有者に対し当該ビルから退去して本件ビルの明け渡しを求めて訴訟を提起した。
一審、二審は、銀行の主張を認め不法占有者に立ち退きを命じた。
しかし、所有者は銀行の権利は「抵当権」であり、「所有権者」としての固有の権利(明け渡しを求めたり、誰に貸すかなどの権利など)を侵害するとして争って上告した。
「以前、最高裁は、平成3年にこの様なケース(抵当権を持つ人が不法占有者に明け渡しを請求できるか?)について判決で否定していた。
8年後の平成11年に最高裁大法廷は裁判官15人全員一致の意見で以下の理由により判例を変更した。
大法廷は、「不法占有により競売が妨げられるなど売却価格が下がる恐れがあれば、抵当権の侵害に当る。権利侵害を排除するため抵当権を持つ人は占拠者に立ち退きを求めることができる」と新判断を示した。
また「不動産を適切に管理すべき所有者に代わる形で占有者を排除することができる。」とも指摘した。
平成3年当時は「抵当権は所有権と異なり、物件がどう使われるかには、干渉できず、占有者がいるからといって抵当権が侵害されたとは言えない」としていた考え方を覆した。
(私見)
最高裁においてこの様に判例を変更することとなった背景には、バブル崩壊によって、銀行などの金融機関の不良債権の増加、日本長期信用銀行、日債銀、山一証券、德陽シティ銀行、拓殖銀行などの破綻や統廃合が続いたことが最大の理由かも知れない。
法律を学んだ者にとって「所有権」や「抵当権」について、またはその効力は基本的にまったく異ることを勉強して来ている。
特に「抵当権」は、債権者(銀行などが)債務者(主に建物の所有者)から「占有」を移すことなく、債務者らに「占有」を継続させて債務の弁済を得る制度である。
従って今日の日本の資本主義社会に於いて、これだけ経済が発展したのは、まさに「抵当権(根抵当権含む)」の制度があったことが大きく寄与している。
一般の住宅ローンがその代表格である。
そもそも「抵当権」は、各々の金融機関に於いて融資をする際にその物から自己の債権を満足できるとした値踏みで融資金額が決定されるものであろう。これまでにはこの様な形で融資等が実行されて来ていた。
しかし現実にはこれだけ地価の変動が大きいともはや土地のみの価値に対する担保評価の時代は過ぎ去ったと見るべきであり、むしろ、企業やその人の信頼、あるいは今日から将来に対する事業の収益性に主眼を置いて、それを判断、分析する専門家の育成による金融システム化へと移って行くであろう。
<最後に>
この様な最高裁の判断は「個別で例外の事情」であって「抵当権者」として「所有権者」への権利行使は、限定的に解されるものと祈っている。
●生活保護者との賃貸借契約トラブル
先月、仙台市太白区内の業者AはB所有の八木山のアパート1ヶ月34,000円、2DKを生活保護者(50才代の夫婦)Cへ賃貸借の仲介し、契約を締結した。
入居したその日から2階に住んでいたDさん親子(子供5才位)に対し、子供の足音が煩いと怒鳴ったり、駐車場2区画の真中に駐車するなどしてトラブルの連続となり、困り果てた。
仲間のA業者は、当社にアドバイスしてほしいと言って来ました。
当社はアドバイスとして、先は大家さんに報告をし、相談をしたうえでの対応をして下さい旨を話した。前述の事実を以って法律上賃貸契約の解除が許されないのではないかとも助言した。
その後A業者は、大家さんBと相談した結果Cさんに対し、7月分~9月(退去日)までの賃料返還、仲介手数料34,000円、敷金68,000円、の全額及び引越し料を支払うので退去してほしいと話した。
Cは即座に了承し、同時にそのお金何時払ってもらえるのか、今直ぐにならいいが後ではダメだと主張して来た。
との報告を受けた。
現在は、9月30日付で契約解除する旨の予告書にサインをもらって保管中で、さらに7月分の日割賃料と敷金68,000円を支払ったとのことであります。
その旨を仙台市生活保護担当者に話したら、「あの人、またトラブルですか」と言われ愕然とした。
市の担当者はCの性格を知っていた様だった。
ほんの一部の人ではあるが、仲介業者の仲介業務としての注意義務や賃借人の身元調査の範囲についてどこまで行えばこの様なケースを防ぐことが可能か等について考えさせられた事例である。