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2013年5月号 | レポート

賃貸住宅~解約理由

1.【高齢者との居住用賃貸借】

Q.若い家族と一緒での居住用賃貸契約はあまり問題がありませんが単身者との契約や、子供達が成長し、親である一定の高齢者一人住まいとなってしまい、入居者が認知症等の様に判断力が低下した場合、連帯保証人と交渉して契約解除が可能でしょうか?

A.連帯保証人は高齢入居者の賃貸契約書に基づき、その責任を同じく負うこととなります。

 従って、家賃を滞納したり、貸している部屋の設備を破損させた様な場合には、滞納家賃や修理費を支払う義務がありますが、賃貸契約を解除する権限までは付与されていません。

 実務では、賃借人が行方不明となった場合、その滞納分が連帯保証人へ及ぶため事実上連帯保証人(親や親戚の方が多い)の立会いで明け渡しを行っています。

 しかし、法律上は家庭裁判所に申し立てをしなければならず、手間と時間とお金がかかります。

 そこで、これからの賃貸契約書には、高齢入居者が認知症と診断され、賃貸借契約の義務の履行が困難な状況に至ったときは、連帯保証人が賃貸借契約を解除する権限と貸室の明け渡しを委任する、とする特約条項を入れておく必要があります。移転先としては公的な施設の確保もポイントでしょう。

2.【東京地裁:耐震性不足は「正当事由」と判決】

 平成25年3月28日東京地方裁判所は耐震性を満たさない賃貸住宅の立退きをめぐり、耐震性不足を借地借家法上の「正当事由」として認め、賃借人に退去を命じる判決を言い渡しました。

 家主が賃借人に賃貸借契約の解除、これに伴う明け渡しを求める際は「家主の正当事由」が必要とされていますが、我国には法律上の明確な規定は無く、もっぱら判例の積み重ねでの判断でした。(ちなみに、ドイツ、イギリスやフランスでは売買による所有者変更や建物の取壊しは「正当事由」とする定めがあります。)

 しかし、今般、裁判所では、建物の耐震強度不足(専門機関の耐震診断に基づく)が借地借家法に定める「正当事由」に当たるかどうかが争点となりました。

 判決では、家主側は入居者に対し移転先の斡旋や転居費用の支払い等について「退去に伴う負担に配慮した手厚い内容」と評価。そのうえで、賃貸借契約の更新拒絶には「正当事由が認められ、明け渡しを求めることができる。」と判示されました。

 私見ですが、裁判所のこの様な判断には3.11東日本大震災、あるいはその後の各地での余震や、近い将来到来する可能性が高い東京都の直下型地震等の物理的な要因が影響しているものかも知れませんね。

更新情報

更新日:2024.11.01
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