被災地の土地価格
1、「震災地の土地価格」
平成5年に七ヶ浜沿岸部の土地に居住用の建物を建築したAさんは、この震災で建物が使用できなくなり解体となったが、未だ住宅ローンの残債があり、かつ仕事も失い結局仙台地方裁判所に自己破産の申し立てを行ない、認められた。
七ヶ浜沿岸部で津波が5mとなった地域の土地利用は「七ヶ浜町災害危険区域」の指定により原則として居住用の建築が出来ないこととなった。
当社は、破産管財人からこの土地を売却するとした場合の価格算定の依頼を受けて調査をしたところ様々な問題点が浮上した。
第一には被災者の救済の視点に立てば、震災前の基準で計算することが許されるのか?
第二には震災後の価格に基づくとなると基準地の価格となるものの、町はその基準地(道路付けや土地の地形)を公表しないとする意向のため査定地と比較が出来ないことで合理的な価格の算出が不可能となっている。
第三には現状有姿(道路、防波堤の破損)の状態での取引事例の価格算定となるが、被災地そのものの取引事例はほとんどないし、家が建築できない土地を取得する(車庫、資材置場、家庭採園)人は皆無に等しい。
第四には、公的機関での買い取り価格となるが、その価格が示されるのは、平成25年度から個別に不動産鑑定士が算定することとなっている。
結論から申し上げれば第四の公的機関での買い取りが一番良い訳ですが、今々の価格を求めるのが裁判所の通例のため結局は本件土地は裁判所の手から離れることとなった。
2、「天災地変の特例法の創設」
震災土地は、地震で道路や下水管が破損しているのに加えて津波による建物等の破損等で周辺の住環境が激変している。従って国は国民の生命や財産を護るためには「天災・地変」の場合における「被災者支援法」を立法化しその中で被災者の救済が急務と考える。
―感想―
防波堤が無くなった海はカモメの啼き声とともになにごとも無かった様に打ち寄せては引き返す波の音がすこぶる印象に残っている。